ニッセーの製品でも特にCNC制御(コンピュータによりあらかじめプログラムされた数値指令によってデジタル制御する方式のこと:Computerized Numerical Control)を備えた機種は、従来の転造盤の機能を凌駕します。そのことから、転造盤ではなく "転造機" と呼んでいます。転造機は加工対象に応じて以下に示す加工方法を選択することができます。
CNC転造機に関しての制御技術、精度に関する詳しい資料はこちら(PDF資料:約400KB)からどうぞ(日本塑性加工学会誌「塑性と加工2006年2月号」への寄稿論文です)。
レシプロ転造とは、図のように左右主軸回転の同期を保ちつつ、正転・逆転を繰り返して転造を行う加工方法です。特に加工の山が高いワークで は、ダイスをワークに押し込む過程においてのワークのリード角の変化により大きな歩みが発生しますが、そのときワークの両端にフランジのような加工部より 径が大きい部分があると、その部分が歩みによってダイスと衝突してしまいます。これが正転・逆転を繰り返すことで歩み量を一定範囲に抑え、ダイスとワーク との衝突を防いだ加工が行えます。さらには、左右の山の角度を均一化すると同時に面祖度の向上や、小さいトルクでの繰り返し加工となることから、変形しやすい中空のワークを加工する場合にも適しています。
複数転造とは、ワークの複数個所に転造する加工方法です。サーボスライドセンター台でワークを軸方向の任意の位置に搬送し、たとえば図のように3組の異なるダイスを取り付けることで3種類の表面形状を1つのワークに転造加工することができます。これにより、従来は1つのワークに複数箇所の転造加工を行う場合は、複数台の転造盤と自動供給機が必要でしたが、複数転造ではこれが1台の装置で実現することができるようになります。さらに、主軸傾斜角制御により、転造するワークのピッチが同じであれば、一組のダイスだけで異なる外径の複数箇所への転造も可能となります。
ポジショニング転造とは、ワークの転造開始角度および終了角度を指定する加工方法で、ねじ溝の開始ないし終了位置を指定できます。加工法は、主軸を回転させずに指定した回転角度でワークに寄せ、ダイスがワークに接触してから主軸の回転を始めます。また、転造終了後にワークを保持した状態から指定した回転角度まで主軸を回転させ、ワークの向きを任意の方向に位置決めします。このことにより、ねじを締めた時に常に一定の方向に揃えることのできるようなねじ部品や、ワークの任意の回転角度でのマーキング、ワークのねじ加工部以外の部位のチャックなど、転造加工後のさまざまな後処理工程にも対応できるようになります。
押込み転造は、丸ダイスの基本的な転造方法の1つですが、従来の押込み転造では、加工中のワークは左右ダイスの同期性の低さとワークどダイスの間のバックラッシュによって、常に一方向への回転ではなく、正逆回転を繰り返しながら転造されます。そのため、加工中のワークとダイスの衝突による騒音が大きくなるという欠点がありました。これがワークとダイスの同期回転による押込み転造ではバックラッシュによる逆回転が抑えられ、騒音が低減します。さらに回転が安定することで、ワークに加わる負荷変動が提言し、変形しやすい中空材のスプライン、セレーション加工を精度よく行うことが可能となり、ダイスにかかる負荷も小さくなることで工具寿命も伸びます。また、多軸制御により、ワークの押込み速度など各軸を自由に設定できるため、最適な加工条件を作成して加工することができます。
可変ピッチ・可変切込み転造とは、各制御軸を1つの時間軸上で独立に制御し、複雑な形状を転造する加工方法です。加工中にピッチを変化させるのは、 CNCプログラムにより転造加工中に主軸傾斜角を変化させることで行い、切込み量を変化させるのは主軸台の移動(切込み量)を変化させることで行います。